妄説・有尾人は実在した?!
おはようございます。こんにちは。こんばんは。夜更かしクンです。
華金ということで、広い広いインターネットの海をきょうも楽しくサーフィンしました。そういえばこの日記ってなんかinternet-boyzの日記っていうらしい。internet-boyzっぽいことしたんじゃない、これ?
ということで、ネットサーフィンの様子を、Google Chromeの履歴を通じてご覧ください。
なぜこうなったのか...。
簡単に解説すると、
「もののけ姫すき!!!!」
「タタリ神って土蜘蛛っぽいな、調べよっ」
「井氷鹿っていう土蜘蛛(人間)がいたらしい」
「しかも人間なのにしっぽが生えてたらしい」
「このひと、水銀の採掘に関わってたらしい」
「じゃあ鉱毒による突然変異じゃね?」
「水銀のことあんま知らんな、調べよっ」
「アマルガム、スゲーーーー」
「水銀、神経細胞の伸長を止めるのか」
「水銀の採掘・精錬方法は?」
「ヒトにおけるしっぽの退化と変異は?」
って感じです。これによって、ちょっとおもしろい妄説ができたので、ここにて発表したいと思います。まあ、上でもちょこっと書いたんですけど、
”古代日本の採鉱民、水銀中毒をはじめとする鉱毒で遺伝的変異が蓄積して、マジでしっぽが生えていた(有尾人)説”
です。オカルト情報誌『ムー』もこれにはびっくり。てか売り込んだらこれ記事買い取ってくれないかな...。とりあえず、順を追って説明します。めっちゃ長くなってしまったので、飽きたら遠慮なくブラウザバックしてもらって構いません。
それじゃオタク特有の早口、イクゾ!!
まず、井氷鹿という人物について。
その八咫烏の後より幸行(い)でませば、吉野河の河尻に到りましき。時に筌(うへ)を作りて魚(な)を取る人あり。ここに天つ神の御子、「汝(いまし)は誰(たれ)ぞ」と問ひ給へば、「僕(あ)は国つ神、名は贄持之子(にへもつのこ)といふ」と答へ申しき。 これは阿陀の鵜飼の祖(おや)。
そこより幸行でませば、尾ある人井戸より出で来たりき。その井に光あり。ここに「汝は誰ぞ」と問ひ給へば、「僕は国つ神、名は井氷鹿(いひか)といふ」と答へ申しき。 これは吉野首(よしのおびと)らの祖なり。すなはちその山に入り給へば、また尾ある人に遇ひ給ひき。この人巖(いは)を押し分けて出でき。ここに「汝は誰ぞ」と問ひ給へば、「僕は国つ神、名は石押分之子(いはおしわくのこ)といふ。天つ神の御子幸行でますと聞きしゆゑ参向(まゐむか)へつるにこそ」と答へ申しき。これは吉野の国栖の祖。 その地より踏み穿ち越へて、宇陀に幸行でましき。
古事記や日本書紀などの神話によれば、初代天皇であるとされる神武天皇は”日向”(宮崎、あるいは九州のどこか)に”天孫降臨”し、その後東へと進軍しながら在地勢力を征服していきます(神武の東征)。彼は順調に瀬戸内海を進んでいましたが、大阪湾で在地豪族と戦って敗れます。その後、紀伊半島まで南下しながら撤退し、軍勢をととのえなおすのですが、その際のワンシーンを描いたのが引用の文章です。引用の最初に出てくる八咫烏ってのは昔のサッカー日本代表のユニフォームにもプリントされていましたが、まあ多分在地豪族を動物にたとえたとかそんな感じだと思います。こういうの結構ある。
神武天皇は八咫烏に先導されながら、和歌山県の吉野川(現・紀ノ川)を上流へ向かって進みます。”吉野河の河尻”がどのへんを指すのかは不明ですが、とにかく、そこで「井氷鹿」「石押分之子」たちと出会うのです。
ちなみに、古事記や日本書紀は神話や伝承をベースにしたただの物語だ、と考える人もいますが、実際の地名なども多く出てくることから、ある程度の事実を含んでいるとされることが近年多くなってきています。
そして、ネットに落ちている様々な考察を読む感じ、
・「井氷鹿」は日本書紀では「井光」とも表されており、これは「井戸≒鉱石採掘のために掘った井戸、坑道」が鉱石で光っていたということ、そのような場所の在地勢力であるということを示す人名
・「石押分之子」は岩を押し分けて出てきたことから、山を切り開いて鉱石を採掘していた勢力であるということを示す人名
であるように思えます。ホンマか?と思われるかもしれませんが、この手の議論は記紀解読界隈ではよくある手法なので見逃してください...。
ちなみに、これはある程度信憑性もあるかなと思っています。
紀ノ川の支流に「丹生川」という川があるのですが、この「丹生」という名前は「丹」が出るところという意味です。「丹」とは朱色のことなのですが(たとえばタンチョウという鳥は、頭が赤いことから漢字で丹頂と書く)、この朱色は水銀の硫化物からなる鉱石である「辰砂」から生産されていました。現に、三重県には丹生鉱山という、水銀が産出する鉱山もあります。
つまりまあ、まとめると、このへんは水銀またはその化合物がとれた土地だったんだろう、ということです。もしかすると、自然水銀が出てて、ほんとに「井光」、つまり水銀と聞いてまっさきにイメージする、あの銀色の液体が滲みだしたりしてキラキラ光っている場所もあったのかもしれない。
ということで、ここまでを軽くまとめると、
「古代の日本には水銀を採掘・精製していた集団がいたんだろう」
ということです。
ほんで、このひとたちにはしっぽが生えていた、古事記にもそう書かれている(真顔)。マジかよ。
こういう記述があるから、「記紀は所詮神話だ」とか言われちゃうんですけど、今回僕はこれを信じることにして、作業中に誤吸入するなどして摂取した水銀による遺伝的変異の蓄積によって、突然変異的にしっぽが生えるようになったのではないかと考えました(服とか宗教的な装飾品がしっぽに見えた、という説が一般的なようです)。
水銀の人体への影響といってまず思い浮かぶのは、いわゆる水俣病です。
工場排水に混じっていた有機水銀が魚などの流域生物に蓄積し、それを食べたひとびとが神経疾患を負った、というものです。これに見られるように、水銀は神経にとってなんらかの害をもたらすと考えられており、実際は神経細胞の伸長を止める働きがあるようです(雑すぎてその手の専門家に怒られそう)。
とまあこのように、水銀は神経を傷つけるのですが、ごく少量では、あるいは無機化合物としての摂取なら、神経には被害をもたらさないこともあるかもしれないと考えられています。古代中国では辰砂は不老不死の薬だとされており(さっきからどうも「民明書房」感がすごい)、秦の始皇帝は水銀(の化合物だと思われる)を服用していた、などの例もあるのですが、始皇帝の死期はそれによって早まったと考えられています。ほかにも、水銀は金メッキ加工の際に使われるのですが、加工時に水銀による健康被害が多発し、方法が改良されてきた歴史があります。奈良時代に東大寺のあのめちゃでかい大仏を金メッキしたときにも作業員たちの間に謎の疫病が蔓延して、それがじつは水銀中毒だったのではないか、とも言われています。
つまり、神経症以外の健康被害をもたらす可能性もあるということです。とりわけ、重金属イオンが遺伝子の転写活性を変化させたりすることはよく知られており、水銀もその例に漏れず、生物の遺伝子に何らかの突然変異を生じさせることもありえるのではないでしょうか(ほんとはこのへんもっとちゃんと論文とか読みたい)。
そして、そもそもヒトにはしっぽがないわけですが、これはサルからの進化の過程で退化していったためと考えられています。その遺伝的機序については明らかになってはいませんが、しっぽが分化していく発生プロセスのどこかでなんかの抑制がかかっているのではないかと思っています(発生生物学を少しかじっている人並の感想)。実際、ヒトの先天異常として、ごくごく稀にしっぽが生えてきちゃった赤ちゃんが報告されていたりします(下の例、骨はないけど皮膚や神経はあったらしい。報告書のなかに実際のしっぽの写真があるのですが、けっこう衝撃的です)。これを読んだとき、突然変異的になんか抑制が外れちゃったりするとしっぽが生えちゃうんじゃないの?となりました。なお、これらの遺伝的なしくみ、原因についてはまだまだわかっていません。
はい。ということで、かなーーーり長くなり、最後はロジックも息切れしがちでしたが、ここで僕の妄説をもう一度書くと、
”古代日本の採鉱民、水銀中毒をはじめとする鉱毒で遺伝的変異が蓄積して、マジでしっぽが生えていた(有尾人)説”
です。どうですかね。古事記に書かれていることを信じたり、わかってもいないしっぽの突然変異について想像したり、稗田阿礼もびっくりの妄想オンパレードなのですが、こうやって考えると、なんかありえるかも、って思えませんかね?思えませんか、そうですよね...。
でも、日本史(古代史)とか古文漢文とか、無機化学とか発生生物学・遺伝学とかの、これまで僕が趣味として得てきたような、また大学での学び()を通じて得てきたような、様々な知識を横断させながらここまで考えることができて、それ自体が単純にたのしかった。大学はもっと分野横断しろとか言われてるけど、もし分野横断がこういうことなんだとしたら、たのしいだろうしめっちゃ関わっていきたい。
よい華金でした。おやすみ。
夜更かしクン